一般的に検波と言えば、高周波に何らかの変調がかかっている信号から、何らかの変調成分を取り出す、逆にいえば高周波成分を取り除くことを言います。この目的を簡単に実現できるのがダイオードです。
ダイオードはご存じのとおり順方向には電流が流れ、逆方向では電流が流れないという基本特性を持っています。ところが高周波でこれを利用すると接合容量や順方向電圧などが問題となってくることがあり、さらに高周波では検波に頻繁に使われるショットキーバリアダイオードに至っては逆方向の漏れ電流の温度係数が大きく、不安定な検波出力を得ることにもつながってしまいます。現在はほぼ使われていませんが、ゲルマニウムダイオードも同様です。

そこでそもそも検波とは何かと考えると、0Vを中心に正負に振れる高周波電圧を0V以上つまり正の電圧を得ることになります。この「正負に振れる」を元に考えると、信号を二乗すれば必ず計算結果は正になる、つまり検波と同じ作用となることが想像できます。
一般的な検波との相違点は、出力の振幅が指数的に変化する、具体的にいえば二乗しているわけですから入力信号の振幅の二乗になるという点です。
その実現方法のヒントは、逓倍器にあります。逓倍とは元の高周波を整数倍するということですが、一般的には元の信号を「歪ませて」2倍や3倍、それ以上の周波数成分を作る回路をいいます。この歪ませる、という操作も数式上では掛け算を行わせているにすぎません。二乗というのはこの掛け算のなかで同じもの同士を掛け算している特別な条件です。


この逓倍のなかで2逓倍、つまり2倍の周波数を得るのに、DDBM(ダイオード・ダブル・バランスド・ミキサ)を使う方法がよく用いられます。3つのポートを持つDDBMですが、RF入力とIF入力に同一周波数、同位相の信号を入力すると、2倍の周波数信号が得られます。これは二乗が目的ではありませんが、掛け算器として扱われるDDBMを二乗器として扱っています。出力信号はDDBMに一般的に内蔵されるトランスを介しているため、交流となっています。
ではもっとその用途に特化した掛け算器はないのかというと、アナログデバイスのAD834をはじめとする4象現の高周波掛け算器が多数存在しています。これらはアナログ的に交流・高周波を正確に掛け算する目的で設計されたICですので、間違いない使い方をすれば大変優れた結果、つまりダイオードを使わずに高周波から正の電圧(振幅変調などのかかった脈流も含みます)を得ることができます。さらに部品の精度を高めると正確な演算をさせることもできます。
その高い掛け算の精度を生かすと、高周波電力の測定電圧をダイオードを使用する事なしに、さらには「測定電力が増えると目盛が詰まる、測定電力値を直流に直しても指数関数的に増加する(ダイオード自身の特性も加わるため、実際にはもっと複雑な関数…非線形)」という問題を一気に解決する方法が実現できます。
高周波電力をダイオードで直流に直せばE=SQRT(P・R)の関係から電力の増加の平方根ずつ検出電圧は変化します。これが測定電力が増えると目盛が詰まる理由ですが、高周波電圧を二乗することでダイオードを使わず正の電圧を得られるだけでなく、測定電圧は電力に正比例します。つまり目盛りはずっと等間隔になるということです。
具体的な回路例は各々のICのアプリケーションマニュアルなどに載っていますが、実際には高周波を直接二乗するアナログICにはいろいろと厄介な問題もあります。それはまた別の機会に紹介できればと思います。